飯山市の伝統産業
飯山仏壇(経済産業大臣指定伝統的工芸品)
今から300年以上前に始まったという仏壇作りは、仏教信仰の厚い土地柄と、漆塗りに最適な澄んだ空気と適度な湿気に恵まれて、飯山の代表的伝統産業として今日に至っています。
飯山仏壇は、側、宮殿、彫刻、蒔絵、金具といった分業で作成を行っており、仕上師を兼ねた仏壇店のもと、密接な相互依存関係のもと産地を構成しています。
特徴は仏壇全体に蒔絵(高蒔絵)が描かれ、それが金具と金箔の美しさを融合して、他の産地には見られない特有の趣を醸し出しています。須弥壇の上にさらにもう一段取り付けるのも飯山仏壇の特徴です。
また飯山仏壇は、仏壇全体を分解することができ、古くなった飯山仏壇も部品ごとに洗って再塗装等を施すことで新しく甦らせることができる「せんたく」も特徴のひとつです。
市街地の北部・愛宕町にはたくさんの仏壇店が軒を連ねる通称「仏壇通り」があります。
内山紙(経済産業大臣指定伝統的工芸品)
今から約300年以上前に始まったといわれる内山紙の製造。原料に楮のみを用いていることが一番の特徴です。また、他産地のように洋紙パルプを混入していないことが、優れた和紙を作り上げるポイント。そして薬品の使用量を少なくし、多量の積雪を利用して原皮に凍皮(夜間雪上に放置して凍らせる)や雪ざらし(雪上に広げてまばらに雪をかけ、この状態で1週間天日にさらす)を行います。このため、自然な白さと丈夫さのある紙ができるといわれています。
時代とともに、部分的に改良が加えられましたが、基本は今も受け継がれています。この流しすき技法による楮100%の手すき和紙は丈夫で、通気性・通光性が優れ変色しにくい性質を持っています。そしてこれらの特徴が、現在では障子紙の代名詞として有名な内山紙が全国でも高く評価されている理由となっています。
生産中心地は飯山市瑞穂地区で、この地方に今日まで和紙生産が残ったのは、多量の雪で和紙の原料である楮を白くさらすのに有利であったこと、近隣地域に障子紙の強い需要があったこと、冬期間の副業として手ごろなど、多くの条件が揃っていたためと考えられます。
小沼ほうき(長野県指定伝統的工芸品)
飯山市の常磐平の南端に位置する「小沼」は、米や野菜の生産地でありますが、冬は豪雪のため農作業ができず、ほうき作りは副業として地位を確立してきました。
かつてほうき作りの作業は、数人で共同でほうき小屋と呼ばれる小屋で行っており、最盛期には10数カ所に全体で100人ほどが集まり、ひと冬で3万本以上が生産されました。今では住宅様式の変化や電化製品の普及で需要が減り、後継者も少なく、当時に比べ生産量は著しく減少しています。しかし、丈夫でしなやかな小沼ほうきは、畳や板張りの廊下に相応しく、今も根強い人気を集めています。
原料となるほうき草の栽培から完成までの全ての工程が手作業で行われており、スキー場のリフトや旅館などでも愛用されています。