飯山三十六景 ~桜ステージ~ 

 

 春の合唱コンクールがもうすぐやってくる。全校生徒のほか、父さん母さんたちも見にくるので、僕たちコーラス部は張り切っている。

 今日は宿題も習いごとも放り出し、お花見がてら屋外練習にと外へ出た。村はずれの桜並木の一本に、おあつらえ向きのキノコのステージを見付けた。

 「ここなら気持ち良く歌えそうだね」まず課題曲を練習し、次は自由曲、これは先生のお薦めのもので、先生の思い出と重なっているみたいだ。でも僕らも気に入っている。

 「さくらー、さくらー♪」満開の桜の下で練習は続いた。

 「ヨーシ、一回本番のつもりでやろう」。僕がタクトを振り下ろすと歌い出しがピタリとそろった。中盤も乗りに乗って、最後にはみんなのハーモニーが空の高い所に吸い込まれるように歌い終えた。

 「ひとつになれた」と思った瞬間、大量の桜吹雪が僕らを包んだ。

 桜色のハーモニー

 空に届くハーモニー

 桜の客のアンコール

 桜の拍手の花吹雪                

     

写生ポイント(矢印を方向を見て描かれたものです。)
更新日 2011年07月20日