飯山三十六景 ~空っぽの鳥の巣~

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村の紅葉を見ながら外で遊んでいる時、椿(ツバキ)の枝に空っぽの鳥の巣を見つけた。みんなで中に入りひなのように固まっていると、声が聞こえた。 「みんな、よく来たな」 「だれ?」 「椿だよ、目をつぶってごらん、面白いものを聞かせてあげる」 目を閉じると僕らの耳の奥に、小鳥のさえずりが聞こえてきた。とても情熱的に感じた。 「それはな、オスとメス、二羽の小鳥が出会った時の恋の歌だ」 「フーン」。 次はやさしいさえずり。 「子守歌かしら」 「その通り、卵やひなを温めている時の母鳥の歌だ」 「これはひなたちがけんかしている声でしょう、父さんにしかられてら、僕んちと同じだ」 「アラ、今度は変な声がいっぱい」 「ひなの声変わりだ、この後間もなくみんな巣立って行った。それからはずーっと空き家で寂しかったが、今日君たちが来たのでうれしくてね」と椿は言った。 僕が「この巣を秘密基地にしよう」と提案するとみんなの目が輝いた。枝で柱を立て、葉っぱで屋根をふき・・・といろいろなアイデアを出し合っている。
腹へった、五羽のひなの五重唱 枝を震わす父鳥のバリトン やさしいアルト母鳥の子守歌 小鳥の一家の七重唱
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写生ポイント(矢印を方向を見て描かれたものです。) |