飯山三十六景 ~かんじきツアー~ 

 

 じいちゃんの先導で、かんじきを履いて雪山ツアーに出掛けた。歩き始めにあった霧が一気に晴れると、立ち木の影が長く伸び、新雪がキラキラ光り出した。 
 「ホラ、ワシらよりも先に歩いたやつがいるぞ!ウサギ、キツネ、テン、リス・・・」。じいちゃんは足跡の主を教えてくれた。 
 「深い雪の下に隠れているものはなーんじゃ?」 
 「枯れ葉、ドングリ、虫、カエル、ヘビ、クマ!」 
 「クマってさあ、秋に腹いっぱい食べて、冬は眠りっぱなしなんだよね!」 
 「今は食べものが少ないからねえ、それにしても不思議な生き方だよね」 
 「穴の中の空気がなくならないかなあ?じいちゃんの大いびきは、家の中の空気を全部吸い尽くすんじゃないかと思うほどだけど、それとは違う眠りなんだろうな!?」 
 足の下の雪穴で、クマの母さんが大あくびをし、子グマにおっぱいを吸わせながら春を待つ姿が、僕には見えた。 
 「川ではな、サケの子がとうに卵からかえって、川下りの練習をしているはずじゃ」 
 「ヨシ、確かめに行こうぜ!」僕らはみんなで川に向かった。 
 ピョンピョン登る足跡 
 サクサク横切る足跡 
 二つが交わる雪の下 
 クマの親子が春を待つ

     

写生ポイント(矢印を方向を見て描かれたものです。)
更新日 2011年07月20日