飯山三十六景 ~雪の結晶~

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真冬の雲の上は、耳が凍るほど寒い。そんなある夜、ぼくらは雪の結晶に乗って遊んだ。
雪の結晶は、右へ回転させると右へ、左へ回すと左へ流れながら降りて行く。
「アラ、こすった所が光るよ」とだれかの声。 「本当、ピンクに光った」 「わたし、緑」といろいろな色に光る。
僕が真ん中をこすると、何とも不思議な音が鳴った。その音は近くの結晶にも反応し合い、オーケストラの演奏前の調子合わせのように冬空に響いた。ふと僕は、指揮者になった気分で両手を振り下ろすと、曲が流れ始めた。シンフォニーだ。みんな音の世界に引き込まれ、宇宙の旅をしているような気持ちがした。
想像をあれこれふくらませているうちに、雪の結晶は地表に近づき、シンフォニーはフィナーレを迎え、雪原に軟着陸してコンサートは終わった。
そして静かになった雪明りの道を、みんなで「雪やこんこ」と歌いながら家に帰った。
白い音符が空に舞う 粉雪の音、綿雪の音、アラレの音がコンコと響く 冬の星座のシンフォニー 雪の夜のコンサート
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写生ポイント(矢印を方向を見て描かれたものです。) |