飯山三十六景 ~棚田のかかし~ 

 

 入道雲に替わって、うろこ雲やほうき雲が目立つようになると、村の棚田の稲も色付き始めた。祭りばやしの笛や太鼓を練習する音も、秋めいた風に乗って聞こえてくる。
 そんな田んぼの中に、お役目真っ最中のかかしが立っていた。わら縄のネクタイを粋に締め、黒とベージュのツートーンの帽子、これがまたチョット良い感じ。

 「ポンチョが似合うかも」と仲間の一言で、かかしの肩にしま模様のタオルを掛けてあげると、ますますカッコ良くなった。気を良くした僕らは、来年はかかしコンクールに入賞するほど面白いかかしを作ろう、ということにした。

 刈り入れが終わると楽しみな秋祭りだ。でも台風が来ると稲も倒されるし、祭りの子どもみこしも担げなくなり、縁日もだめになる。台風が来そうになったら、祭り用の大うちわをこのかかしに持たせて立て、カカシパワーで台風をどこかへあおぎ飛ばしてやろう、と僕は思う。

 山の棚田のおかしなかかし
 わらのネクタイボロソンブレロ
 手には祭りの大うちわ
 驚く台風よけて行く

     

写生ポイント(矢印を方向を見て描かれたものです。)
更新日 2011年07月20日